懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
隆一の希望通り、マリオスターの社長だって継いだ。仕事に妥協もしていない。会社の未来が自分の双肩にかかっているのも自覚している。
それなのに結婚すら、まともに自分の意見が通らないというのか。
ふたりがまんじりともせず静かに睨み合っていると、そこに母の喜代が亮介の分のコーヒーをもって現れた。
「あらやだなぁに? ふたりして神妙な顔して。いったいどんな話なの?」
不穏な空気を察知したか、わざと明るい声でふたりを交互に見る。その場の雰囲気を和らげるつもりらしい。
だが亮介も、今は喜代の言葉に乗る余裕がない。
「彼女以外とは結婚しません。彼女のお腹には僕との子どもがいます」
「えっ? 誰のお腹に亮介の子どもが?」
いきなりの話に喜代は素っ頓狂な声を出し、隆一はカッと目を見開いた。
「……なに?」
血走った目は明らかに動揺している。