懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


「妊娠している、というのか」
「はい。五月に生まれる予定です」


話がまったく読めない喜代が「亮介さん、いったいなにがどうなってるの?」と問いかける。
半年前に別れた里帆に子どもがいることが判明したと話すと、喜代は「まぁ、本当に?」とおっとりした口調で返しながら隆一の隣に腰を下ろした。

何事にも動じないイメージしかない隆一でも、さすがに驚いたのだろう。目を丸くした状態は、シャッターを切った瞬間のよう。そのまましばらく固まった。

だが、いつまでもそんな隆一にかまっている時間はない。


「ですから彼女と早急に籍を入れようと考えています」


亮介が毅然とした態度を貫くと、隆一はようやく止まっていた時間を動かした。


「……あちらから亮介にコンタクトをとってきたというわけか」
「違います。彼女との再会は偶然でしたから」
「どうだかな」


驚いた割には疑う手を緩める気はなさそうだ。
だが、里帆の住む街に足を踏み入れたのは亮介のほう。里帆から再会を操作できるはずもない。
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