懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


「ですが、スケジュール管理や来客への対応など、秘書がいたほうが業務もスムーズに進みます」
「アメリカにいたときも経営戦略室にいたときも、そんなものは特段必要としなかったんだ。だいたいスケジュール管理を自分でできない男が大勢の社員をまとめられるのか?」


亮介は大学を卒業してからの三年間、小売りの最先端と言われるアメリカの大手企業で修業を積んでいる。その後は日本国中に散らばるマリオスターの店舗責任者として敏腕を奮い、つい半年前まで本社の経営戦略室室長として開発関連や経営数値全般に携わってきた。

マリオスターの社長を継ぐべく、徹底的に帝王学を学んできたのだ。

副社長に就任したのはその後、三十一歳のとき。この半年間は秘書をつけずいる。運転手さえ煩わしいと、自ら車を運転することも多いらしい。

冷静な成島でも目を白黒させ、亮介の異論に言葉を返せない。

このままだと里帆はお役御免。憧れの秘書室に配属になったというのに職務を失うことになる。


「それは困ります!」


心の声がそのまま里帆の口から飛び出した。
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