懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「亮介から突然聞かされて、心の準備ができていなかったからあんな態度になっただけだと思うの」
本当の隆一はそんな小さな器の男ではないと、喜代は言いたいらしい。
果たしてそう簡単にいくのだろうか。
祖父の亡き後の十数年、トップとして会社をけん引してきた隆一の器が小さいとは思わない。だが、シングルマザーの子どもとして育てられ、苦労したからこそ忌み嫌う場合もあるのではないか。
どちらにしても亮介の確固たる気持ちに変わりはない。里帆と結婚し、ふたりを生涯守り抜くと。
「今度、母さんと杏には里帆を紹介するよ」
「あ、うん! ぜひ会いたい!」
小さくジャンプする杏の隣で、喜代は「待ってるわね」と微笑んだ。