懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
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実家を出て会社へと車を走らせる間、考えるのは必然的に隆一の生い立ちについてだ。
母親の連れ子として黒木家にやって来た隆一は、もしかしたら亮介よりも遥かに大きなプレッシャーの中で生きてきたのではないか。
母親と新しい父親の間には子がなく、後継ぎは自分ひとり。社長になるにあたり、親族からの反発も当然あっただろう。厳しい環境で生き抜いてきたのは想像にたやすい。
亮介に良家との婚姻関係を強く望むのも、誰からもなにも言わせない強固な地盤を亮介に与えたかったからではないか。
普段まったく見えることのない親心が、そこに密かに隠されていたのかもしれない。
社長室に着くなり、成島が後を追うようにして入ってきた。
「社長、おはようございます」
「おはよう。昨日は悪かった」
自分への怒りを成島にぶつけるような真似をしてしまった。
「いえ」
成島は顎を引き、軽く首を横に振った。