懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「広いしハイセンスだし、もう言葉が見つからない……」
里帆が初めてこの部屋を訪れたときも似たような状態だったため、由佳の気持ちはよくわかる。正確には、訪れた翌朝だけれど。
対して成島は別段驚くような様子はなく、前を向いたまま澄まし顔だ。何度か来たことがあるのかもしれない。
ふたりは並んでソファに腰を下ろした。
「コーヒーでも淹れますね」
キッチンに向かおうとした里帆を亮介が呼び止める。
「俺がやるよ」
「仕事で疲れて帰ったのに。私がやりますから大丈夫です」
「いいから。里帆は座ってな」
くるりと反転させられ、優しく背中を押されてしまった。
仕方なくテーブルを挟んでふたりの前に座ると、由佳が意味深な笑みを里帆に投げる。
「優しい旦那様でよかったね」
「旦那様なんて! まだ結婚してないから」