懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
ハッとして口もとを手で押さえたところで、一度出た言葉は戻らない。
「立川さん、なにを言ってるんですか!」
成島の焦りは手に取るようにわかった。いつもクールでペースを崩さないのに、慌てるように里帆を叱責する。
あぁ……なんてことを……!
そう思っても後の祭り。副社長に盾を突いた社員として干されるに違いない。店に戻るどころかクビだ。
「も、申し訳ありません!」
急いで頭を下げて唇を噛みしめていると、クククという笑いをこらえたような声が降ってきた。
「俺にはっきり物申すとはおもしろい。いいだろう。秘書として認めようじゃないか」
里帆はパッと顔を上げ、亮介を見た。
どことなく愉快そうに切れ長の目を細めている。おもしろそうなおもちゃを見つけた子どものようにも見えた。
それでも予定通り秘書になれたのは間違いない。