懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
◇◇◇◇◇
副社長秘書として里帆がまず取り掛かったのは、亮介がこれまで作成管理してきたファイルの整理だ。
というのも、初日に早速あった部長クラスとの打ち合わせで使う資料を、里帆がなかなか見つけられなかったからである。結局、亮介の手を煩わせてしまった。
副社長関連のファイルは、里帆のパソコンからもアクセスできる共有フォルダに保存されている。そのフォルダ内には不規則にファイルが収められていた。
これじゃ、どこをどう探したらいいのかわからないよね……。
副社長応接室に隣接する執務室の一角に置かれた秘書デスクでモニターと睨めっこ中の里帆は、そばにコトッと音を立てて置かれたカップに驚いて顔を上げた。
「申し訳ありません! 副社長にコーヒーを淹れさせてしまうなんて……!」
亮介はもう片方の手に自分用のカップも持っていた。
恐れ多いのはもちろん、自分の気の利かなさに呆れる。作業に夢中になっていたとはいえ、常に上司に気を配らなければならない秘書として落第だ。