懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


「近頃は建設単価が上昇傾向にあるのが最大の理由ではありますが、テナント企業の出店数も鈍くなっております」


核店舗の売上不調のあおりを浴び、家賃を払うのが精いっぱいというテナント企業の疲弊のためだ。


「そこで、顧客が目的意識をもって来店する意味や理由をつくっていこうと」
「たとえばどんな意味をもたせる?」
「食関連の需要が高まっていることを受け、それに適合する商品の強化であるとか、フードコートの大規模な刷新です。思いきって図書館や市役所機能の誘致というのも考えております」


集いの場であるギャザリングプレースづくりが、これからの大型商業施設には必要であると考えたのだ。つまり、行く価値のある場所を造り上げていく。


「それだけで前年度の売上を今後もクリアしていけると思っているのか」


隆一は納得できないようで、鋭い眼差しを亮介に向けた。考えが甘いと言いたいのだろう。


「もちろんそれだけではありません。そちらの資料にもあるとおり、核店舗に加えてパワーのある複数のサブ核店舗を充実させます。ゾーンごとの居心地のよさを創造する照明計画や色彩計画によって滞留時間を延ばす試みもあります」
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