懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「いや、自分の分を淹れるついでだ。これまでいつもやっていたんだから、べつになんのことはない」
あっさりとそう言うが、お茶やコーヒーを上司に淹れてもらうなんてとんでもない。
「これからは私がやりますから。遠慮なく、なんでもお申しつけください」
「オッケーオッケー。そんなに力むな。リラックスしろって」
亮介が里帆の肩をとんとする。
そう言われて、自分の鼻息が荒くなっているのに気づき、ふっと力を抜いた。
秘書として本社に来て以降、里帆は絶えず緊張感の中にいる。気を抜くと大きな失敗をしそうで怖いのだ。
「……ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる。精いっぱいやると言っておいて、口ばかりだと恥ずかしい。
「で、なにをやってる?」
亮介はコーヒーをひと口飲んでからモニターを覗き込んだ。