懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
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その三日後。金曜日の夜、亮介は野崎を連れてマンションへやって来た。
里帆が玄関で出迎えると、直立不動から腰を直角に折り曲げて大きな声で挨拶をする。
「初めまして! 野崎徹也と申します! 黒木社長の秘書となって四日。まだまだ未熟者ですので、どうぞご指導をお願いいたします!」
体育会系のノリというのか、ただ単に元気が良すぎるというのか、彼のそんな様子に里帆は面食らった。
先に部屋に上がった亮介も苦笑い。〝な?〟という意味合いの視線を里帆に投げてよこした。
リビングに通した野崎は、「うわぁ……」とため息交じりに部屋中をきょろきょろとするばかり。亮介が着替えて戻るまで、里帆が準備した資料を一向に見ない。結局、亮介に「おい、やる気はあるのか」と注意されるまで、視線が定まらなかった。
ところがいざ説明を始めると、今度は里帆が気になるらしく、ちらちらと目線を投げかけてくる。
妊婦がそんなに珍しいのかな……?
どうにもやりづらい。