懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
なににも代えがたいふたつの愛
亮介の妹、杏からスマートフォンのメッセージアプリに連絡が入ったのは、その翌週の土曜日のことだった。隆一に今日会いに来てはどうかというお誘いだ。
でも亮介は出張で昨日から不在。里帆ひとりでは話にならないだろうと思い、杏にその旨の返信をすると意外な答えが返ってきた。
『里帆さんひとりでも大丈夫ですよ。私も母もいますから、サポートの心配はいりません。タクシーを向かわせますから、それに乗ってきてください』
そこまで言ってくれているのに無下にはできない。そもそも隆一が結婚を認めない根本的な原因は里帆にある。だとすれば、ひとりでも問題はないかもしれない。
里帆は杏に『よろしくお願いします』と返信し、車の到着を待った。
およそ二十分後やってきたタクシーに乗り込むと、運転手は杏から事前に行き先を聞いていたようで、里帆がなにも言わずとも出発。黒木家を目指して走り始めた。
四月も半ば。車の中にいると窓から差し込むうららかな日差しで、暖かさをかなり感じる。
これから隆一に会うという緊張のせいか、お腹がなんとなく重い。生理痛のような、お腹を壊したときのような鈍い痛みだ。今朝起きたあたりから感じていたが、隆一に会うと決まったせいか痛みが増している気がする。