懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
きっと赤ちゃんにも緊張が伝わっているんだよね。先生も、気持ちはお母さんとリンクするって言っていたし。
なにしろ、あの隆一に会うのだから。亮介と自分を引き離したくて仕方がなかった隆一と。
緊張がお腹に伝わるのも当然だ。
優しくお腹をさすりながら車に揺られること三十分。いよいよ亮介の実家に到着した。
マンションを出る前に【お父様にお会いしてきます】と亮介に送ったメッセージは、まだ既読がつかない。よほど忙しいのだろう。
白い壁にテラコッタ色のレンガでアクセントをつけた北欧風の建物は、手入れの行き届いた広い庭の真ん中に佇んでいる。想像していたよりもずっと大きい。
タクシーを降り立った里帆は、圧倒されてしばらく見上げた。
震える指先でインターフォンを押すと、応答もなしに玄関が開いた。喜代と杏、ふたりが揃って顔を覗かせる。
「里帆さん、いらっしゃい」
「こんにちは。先日はありがとうございました」
「そんな挨拶はいいから、上がって上がって」
喜代に促されて入った玄関は大理石でピカピカのうえ、十畳近くありそうな広さだ。
亮介のマンションで豪華なものに見慣れていた里帆でも、思わず目を見張る。