懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


その先に続く廊下も、一般家庭のものとは幅が違う。天井は高く、配されたライトもいちいちおしゃれ。さすがはマリオスターの一時代を築いてきた人物の自宅だと思わずにはいられない。


「あの、これどうぞ」


靴を脱いで上がってすぐ、喜代に小さな箱を手渡す。
手土産もなしにお邪魔するわけにはいかないと、途中タクシーを止めてパティスリーで買ってきたシュークリームだ。里帆の好物でもある。


「あら、里帆さん、そんなお気遣いなんてよかったのに。いきなりお誘いしてごめんなさいね」
「いえ、こちらこそお声をかけていただいてありがとうございます」


改めてお礼を言って頭を下げる。


「だけど、臨月の里帆さんをひとり残して出張だなんて。亮介ったらしょうがないわね」
「亮介さんも迷っていたんですけど、予定日はまだ少し先ですし。大事なお仕事なのでそちらを優先していただきました」


昨日から一泊の予定で帰りは今日の夜。そんなに長い時間ひとりになるわけでもない。
里帆はひとりでのんびり育児本を眺めたり、ゆっくり散歩をしたりして過ごしていた。
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