懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
里帆に気づいて向けられた視線は、決してあたたかなものではなかった。社長時代から人並外れたオーラは今も健在。会長の威厳たっぷりだ。
「ご無沙汰しております。立川里帆です」
お辞儀をしてゆっくりと戻すと、隆一は返事をするわけでもなく、ただじっと里帆を見据えていた。
心の奥まで見透かされそうな瞳に怯んで、つい目を逸らす。
「お父さんったら、なんでそんな態度なの? 里帆さんがこうして来てくれたのに、挨拶もなしなんてひどすぎる。見損なったわ」
「あ、おい。悪かったって」
杏にぷいと顔を背けられ、いきなり慌てたようにとりなす。ゆったりと背中を預けて座っていたソファで、体を起こした。
娘には弱いようだ。
「それなら、ちゃんと挨拶してあげて」
杏に言われて、バツが悪そうに里帆を見る。咳払いを軽くしてから口を開いた。
「あのときは悪かった」
「はい? ……あ、いえ」