懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
亮介がいない不安が頭をよぎる。
立ち会い出産を強く希望していたため、彼がいれば安心だと高をくくっていた。未知なる痛みに恐怖が先行する。
「里帆さん、大丈夫。私がついてる。なにも怖くないからね」
喜代は里帆の背中をさすりながら、手をぎゅっと握った。
喜代の心強いひと言にハッとさせられる。
そうだ。自分には新たにできた家族がついている。
出産を目前に震えていた心は、途端に落ち着きを取り戻し始めた。
喜代は杏に亮介への連絡を、隆一には病院への連絡をてきぱきと指示し、里帆の手を取ってずっと励まし続けた。
隆一の車に乗せられ、病院へ三人で向かう。
家を出る前にはトイレでおしるしを確認し、前駆陣痛は次第に間隔を狭めているようだった。