懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


「お互いに使いたい漢字や響きを持ち寄ろうって話してたんですけど」


まだ先だと思って油断して、話し合いはまだだ。
まったく考えていないわけではない。里帆にもたったひとつ、使いたい文字はある。


「そっかぁ。名前考えるのワクワクして楽しそう」
「一生使う名前なのよ。面白半分でつけるものじゃないわ」


喜代に諭されて、杏も「そうだよね」と素直にうなずく。


「だけど、お兄ちゃん、なんとか間に合うといいな」
「そうね……」


喜代と杏は揃って腕時計をたしかめた。

亮介の出張先は大阪。すぐに新幹線に乗れれば、あと二時間ほどで着く。

どうか間に合いますように……。

そう願うほかになかった。
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