懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
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いよいよ陣痛の間隔が短くなり子宮口も開いてきた里帆は、いよいよ看護師に付き添われて陣痛室へ向かう。
「里帆さん、お兄ちゃん、こっちに向かってるからがんばって」
「ありがとう、杏さん」
里帆が杏に微笑み返したときだった。
「里帆さん」
隆一が静かに呼びかける。
一瞬、痛みの存在を忘れてしまうほど神経が張り詰めた。
「……はい」
隆一の顔つきがやわらかなものに変わっている。それまで里帆に向けていた険しさが消えていた。
「もっと早くふたりの結婚を認めるべきだった。……遅くなってすまない」
隆一ともあろう者が深く頭を下げる。
すぐに顔を上げてもらおうとした里帆を引き留めたのは、隣で里帆を支えていた喜代だった。