懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「謝らせてあげて」
里帆にだけ聞こえるように囁く。
「里帆さん、ひどい仕打ちをした私を許してくれるか?」
「もちろんです……!」
許すも許さないもない。子どもを思う親なら、誰もが同じ。これから母親になろうという里帆には、その気持ちが痛いほどにわかった。
「ありがとう。私はここで里帆さんが無事に出産を終えるのを待っているから」
「はい」
力強く返し、陣痛室に入った。
カーテンで仕切られた六つの空間があり、そのベッドに横になる。杏と隆一は通路で待つことになり、喜代ひとりが里帆のそばに残った。
「里帆さん、よかったわ」
「お母様と杏さんのおかげです」
「そんなことはないわ。里帆さんの想いが隆一さんに届いたのよ」
喜代はそう言って優しく笑った。
激しい痛みが五分おきに襲ってくる。その度に息を長く吐いて凌ぐ以外に手立てがない。