懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


喜代が里帆の腰をさすったり手を握って力づけたりして痛みを和らげようとしてくれるが、なかなか紛れるものでもない。

子宮口がもっと開くまで、いきんではいけないと言われているため、ただひたすら耐えるだけ。まるでゴールを知らされないまま走るマラソンのようだ。

こういうときだからこそ亮介に会いたくて、声を聞きたくてたまらない。口にこそ出さないでいるが、心は亮介を求めていた。


「んん……っ」


痛みをこらえるたびに苦しい息が漏れる。だんだんと意識が遠のいていく気がして、いっそ飛んでしまえばいいのにとすら思った。


どのくらい時間が経ったのか。子宮口が十センチ開き、いよいよ分娩室へ移動となった。
立つのもやっと。看護師に支えられながら、ようやく分娩台に乗るような状態だ。

この病院は夫以外の立ち会い出産ができない決まりのため、喜代とは陣痛室でお別れ。あとは助産師と看護師だけが、里帆の頼みの綱となる。

早くこの痛みから解放されたい。
早く亮介に会いたい。
早く、産まれてくる赤ちゃんの顔を見たい。

三つの願いを抱え、どんどん激しくなっていく痛みと戦う。
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