懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「亮……介さん……っ亮介……さ、ん……」
無意識に彼の名前を呼びながら、強い痛みがきたタイミングでいきむ。
「立川さん、がんばってー」
助産師と看護師に見守られている中、霞む視界の片隅に愛しい姿を捕らえた気がした。
あまりの苦しさに見た幻覚。そう考えた矢先――。
「里帆、遅れてごめん!」
聞きたくてたまらなかった亮介の声だった。
「亮介さん……!」
亮介は里帆の手をしっかりと握り、額にキスを落とした。
「里帆、がんばれ。あと少しだ」
小さいながらも力の込められた声に勇気づけられる。
やっと亮介に会えた。そのうれしさが里帆に力を与えた。