懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


激しい痛みの波がきそうになる前に二回深呼吸をし、十秒ほどいきむ。目を瞑らず腹筋運動をするように体を少し起こし、声を漏らさないように。
助産師の指導に沿って、何度もその繰り返しだった。


「立川さん、いいわ、とっても上手。旦那様も来たし、あともうちょっとその調子でがんばりましょうね」


助産師の言葉にうなずく余裕はない。
亮介は里帆が体を起こしたタイミングで背中に手をあて、ときどき口に水分を運ぶサポートを続ける。


「頭が見えてきたわ。あとひと息よ」
「里帆、がんばれ」


いきむときに声を漏らしてはいけないと言われていても、コントロールなんてできるはずもない。


「んーーっ……!」


ひときわ大きな波がやって来た次の瞬間――。
分娩室に小さくも力強い産声が響き渡ると同時に、「里帆、ありがとう」と亮介のキスが降ってきた。
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