懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
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授乳を終えて新生児室から戻った病室に亮介の姿を見つけて、里帆の心と声が弾む。
「亮介さん!」
出産してから四日目。亮介はランチタイムや取引先へ向かう途中など、仕事の合間に何度も顔を出していく。
婚姻届を先に出し、直後に出生届を出したため、父親の欄にはしっかりと亮介の名前が刻まれている。
晴れて、黒木里帆となった。
「授乳? わざわざそのたびに授乳室に行くのも大変だな。母児同室ならいいのに」
亮介にしてみれば、部屋にいつでも赤ちゃんがいれば好きなときに会えるというのだろう。
この病院は、退院後に待ち構える大変な育児を前に、出産を終えたばかりの母親には体を休めてほしいという考えがあるそうだ。
授乳時間があらかじめ決められていて、その時間に新生児室へ行ってほかの母親たちと一緒にオムツ交換や授乳をする。今日は沐浴の練習もしてきた。