懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「これでよかったとは?」
「立川さんのことです」
「彼女が中傷の的になった件ですか?」
「違いますよ」
恭子が歌うように節をつけて否定する。
ではなんだというのか。
「社長と結婚しちゃってよかったんですかって聞きたいんです」
「……言っている意味がわかりませんが」
「室長、立川さんのこと好きでしたよね?」
藪から棒に言われ、体の中心が冷やされる感覚がした。
「な、なにをいきなり。……お、おかしなことを言うものですね」
いつも冷静沈着な自分が口ごもるとは、なんたる失態。
動揺が成島を焦らせる。妙な動きを見せたのは舌ばかりではない。心臓まで妙なリズムを刻んだ。
「彼女がまだ店舗勤務だったとき、やけに立川さんのいる店ばかり行っていましたよね。立川さんと話すときの室長の目は、ほかの人を相手にするのとは全然違っていましたし」