懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


会社のトップからの指示を拒絶できる人物は、この世にいったいどれだけいるだろうか。
里帆と亮介が付き合っていた事実に傷ついたが、それ以上に自分がこれから彼女を傷つける立場になるのが苦しかった。


「社長と立川さん、別れていた時期があったそうですね」


そんな情報まで入手していたのか。いったいどこから漏れたのか。


「そのときに奪ったらよかったじゃないですか」
「……なにを言っているんですか」


恭子はすべてお見通しだというのに、成島はまだ自分の気持ちを隠そうと試みる。
だが目は激しく泳ぎ、もはや無様でしかない。


「相手が弱ってるときがチャンスって言うじゃないですか」


綺麗な顔をして意外と言うものだ。恭子は涼しげな表情で微笑んだ。

手切れ金を渡したあの日、そんな気持ちがまったくなかったとは言いきれない。肩を震わせ涙をこらえる彼女を抱きしめ、自分の元に来いと言いたい気持ちを抱えていた。
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