懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


一子に抱き上げられた一絆は一瞬だけ不安そうな表情を浮かべたが、「いないいないばぁ!」と幸則に宥められてすぐにご機嫌になった。
まだ声を立てて笑いはしないが、ニコニコと表情で上機嫌なのがわかる。


「人見知りしないのね」
「そうですね。基本的に大丈夫みたいです」


よほどお腹が空いていない限り、誰に抱っこされても泣かないのは里帆にとってもありがたい。


「赤ちゃんはいいわねー。いくら見ていても飽きないし、空気がほんわかして」


まさにそう。まだ意思疎通はできないが、寝顔ですら何時間でも眺めていられる。いつもと違った動きをすればうれしいし、一瞬一瞬すべてを写真に収めたくなる。


「うちの修太郎も早く孫の顔を見せてくれればいいのに」
「アイツはまだまだだろう。なんせ恋人すらいないんだからな」
「そうだったわね」


幸則と一子が自嘲気味に笑い合う。
今頃、修太郎はくしゃみをしているだろう。
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