懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
ぺらぺらとページをめくり、亮介がつぶやく。
「いえ、そのようなことは」
走り書きの部分もあるから、正直言うとほかの人に見せるのは恥ずかしい。
「文字にはその人の本質が出るって言うけど、本当にそうだな。俺の字は乱暴だし」
「えっ、そうですか? 私、副社長の書かれる字、とても好きです」
そう言ってから、とんでもないことを口走った気がしてハッとする。文字のことを言っているつもりでも、〝好き〟という言葉が妙に気恥ずかしい。
ところが変なところを気にしているのは里帆だけで、亮介は特に気にしている様子がまったくなかった。
意識しすぎで決まりが悪い。
でも事実、亮介の字は決して乱暴ではなく、少し右肩上がりの丁寧に書かれた文字だ。
「で、この〝シュークリーム〟ってのは?」
亮介が開いたノートの欄外を里帆に見せる。