懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


それからの里帆は、出産に向けてひたすら突き進む毎日だった。

食べ物をあまり受け付けないつわりの時期を乗り越え、この頃は体重も少し戻りつつある。
伊織に太りすぎは禁物だと注意されているため、里帆なりに食生活に気遣っている。


「今のところ順調に育っているけど、だからといって過信したらダメ。なにがあるかわからないのが妊娠だから。血液検査の結果もちょっと貧血気味だし」


来院してすぐに採取した血液の結果をパソコンで確認しながら、伊織はキーボードを叩いた。


「そのままでも大丈夫ですか?」
「そうねぇ……次回も貧血が改善されなかったら、鉄剤を飲みましょう。それまではなるべく食材から鉄分を摂れるようにしてみて」


伊織の言葉にうなずき、看護師に見送られて診察室を出た。

鉄分ならレバー? ちょっと苦手だな……。でも背に腹は代えられないって言うし、がんばって食べてみよう。

小さな決意を胸に病院を後にした。
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