懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
彼女の気持ちは、金でカタがつく程度のものだったのか。生活のいっさいを捨ててまでも金がほしかったのか。
その答えを聞きたくて、あらゆる手を尽くして行方を探ったが見つけられなかった。
隆一からしつこく結婚を打診されるようになったのは、里帆が秘書として本社へ異動して間もなくの頃。副社長就任の一年後には社長に就任することが決まっており、なるべく早く身を固めるようにと再三にわたって言われていた。
どこそこの令嬢だと紹介されたのも数知れず。だが、もともと結婚に対して興味の薄い亮介が、良家の娘をあてがわれたところで心を動かされるはずもない。
そうこうしているうちに秘書として懸命に職務を全うしようとする里帆が、気になり始めている自分に気がついた。
素直で真面目なうえ、よく気が利く。自分の意見もきちんと言える強さも持ち合わせている里帆は、亮介の目に輝いて映った。
初めて自分からほしいと思う女性だといっても過言ではない。
そうして手に入れた里帆が消え、昨日、再び亮介の前に。
疑惑を拭い去れないまま、どうしたいのかと自問していたそのとき、社長室のドアがノックされる。入ってきたのは秘書室長の成島だった。