懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
秘書室にいる社員は、すでに役員付きの秘書。新たに探すとなれば、本社内か店舗勤務の中からになる。
亮介が副社長だったときに秘書として里帆を選んだのも成島だ。
成島は、本社や日本全国の店舗を回り、容姿はもとより仕事ぶりを通じてその資質を見分ける。その目がたしかなのは、里帆を見ればわかることだ。
この五人の候補者も、おそらく素晴らしい人材なのだろう。
だが。
「必要ない」
亮介は、広げられた写真付きの書類を適当にまとめて成島に突き返した。
そばに女性を置くことに対するトラウマとでもいうのか。自分がそんなに弱い人間だとは思いもしなかった。
いつからだっただろう。自分に近づいてくるのは、男女問わずたいがいが肩書きや地位目当てだと気づいたのは。
大学を卒業してアメリカで修業していたときですら、日本企業の御曹司というだけでチヤホヤされた。隠していても、どこからか必ずそんな情報は漏れていく。