懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
横顔に亮介の刺さるような視線を感じ、そちらを見られない。俯き加減の目線すら動かせず、ダッシュボードの下を見つめた。
お腹に手をあてて話す勇気をもらおうとしたが、期待も空しく与えてくれそうにない。
「……里帆?」
言葉を探して考えあぐねる里帆に亮介が声をかける。
「社長から……亮介さんのお父様からお話があったと思います。その通りの理由です」
亮介が予定通り社長に就任していれば、現在の隆一は会長かもしれない。
手切れ金と亮介を天秤にかけ、彼を切り捨てた。亮介はそう聞かされているはずだ。
「里帆の口から聞かせてほしい。はっきりとそう言ってくれ」
人から聞かされるのではなく、本人の口から。その気持ちもわかる。
なにも言わずに消えたのならなおさらだ。
傷つけたのは里帆。その対価を支払わなくてはならない。
――自分の傷を隠してでも。