懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
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亮介に連れてこられた建物を前にして里帆が立ち止まる。
すべてを視界に収めるのが難しいほど大きく立派なホテルは、高級として名高いホテルだ。ここに亮介の言うフレンチレストランがあるという。
「本当に行くんですか?」
煌びやかな光を放つエントランスを見て、里帆が尻込みする。
「なにを今さら」
「今さらって、私は何度も」
「ほらほら、こんなところで言い争ってたらカッコ悪いよ」
亮介に言われてハッとする。
ターコイズブルーの制服を着たドアマンが見ているのに気づき、急いで取り澄ました。
その隙に亮介が里帆の腰に手を回したものだから、「ひゃっ」なんて声が出る。それにもドアマンからチラッと視線を投げかけられ、慌てて口もとを押さえた。
これがエスコートというものなのだろうか。亮介は里帆の腰に手を添えたままエントランスから入り、エレベーターへと向かう。
迷わない様子から、亮介がここへよく来ているのが窺える。