懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
目に入る人みんながセレブのように見え、自分がこの場には不釣り合いに思えてならない。かっちりとしたグレーのスーツというのも、いかにも堅いイメージであか抜けないせいかもしれない。
それに比べて亮介は華麗な立ち居振る舞いで堂々としており、すれ違う人がみな彼を見ているのがわかった。里帆でもきっと、そうしてしまうだろう。
こういう場所にくると、亮介との格の違いをまざまざと感じる。自分とは住む世界がべつ。そう思い知らされた。
「黒木様、いらっしゃいませ」
黒づくめのスーツを着た男性スタッフが店先で出迎える。顔を見ただけで亮介がわかるのだから、よく使う店なのかもしれない。
「隼は?」
「社長でしたら、間もなくこちらかと。テーブルへご案内いたします」
恭しく頭を下げ、スタッフが里帆たちを先導する。
「どなたかとお待ち合わせなんですか?」
こっそり尋ねると、亮介は首を横に振った。