懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました

そんな夜が里帆に訪れる未来があるのかは微妙なところである。


「ありがとう。亮介の秘書なんて大変な仕事だろうけど我慢してやって」
「我慢ってなんだよ」
「わがままボンボン息子の秘書なんて、俺だったら絶対嫌だね」
「お前に言われたかない」


遠慮なしの言い合いがおもしろくて、里帆はくすくす笑いだした。
ふたりの視線がいっぺんに里帆に向く。


「……あ、ごめんなさい。おもしろくてつい。仲がよろしいんですね」
「お互いに言いたいことを言い合う、ただの悪友だよ」
「そうそう。こんなやつだけどよろしくね、里帆さん」
「おい、馴れ馴れしいんだよ。俺だって名字呼びなんだぞ」


再び始まった言い合いは留まるところを知らない。
楽しいふたりのやり取りに里帆の心も弾んだ。

それから運ばれてきたコース料理は、どれも目に美しく味も抜群においしかった。食べ慣れないフレンチに戸惑いながらも、食後のコーヒーでほっとひと息といったところだ。
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