懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「でもきちんと育っていますので」
二十六週に入り、胎動もより感じやすくなっている。先生によれば、子宮の位置によっては外側ではなく内側に膨らむタイプもいるらしい。
おそらく里帆にはその傾向があるのだろう。
大きくなっていないように見えて、体重は着実に増えつつある。
「なら安心。でも今日は俺もいるから、なんでも任せてよ」
頼もしい助っ人に素直に「それじゃ、遠慮なくお願いしちゃいますね」と返した。
亮介が再び店に姿を現したのは、その日の閉店まであと少しというときだった。
里帆に子どもがいると、亮介が知った日から四日。『また来る』と言い残していったため、心のどこかで心待ちにしていた里帆は自分が嫌になる。
もう会うべきではないのに。
顔を見られたうれしさは、すぐに苦しみに変わっていく。
パンには目もくれず里帆へ一直線に足を進める亮介。
「いらっしゃいま、せ……?」