懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


修太朗は不思議そうにその姿を目で追った。


「里帆、話したいから時間をとってくれ」
「……この前は病院まで運んでくださって、ありがとうございました。お礼もきちんと――」
「里帆」


急いで話をすり替えた里帆を亮介が遮る。
修太朗は目を白黒させてふたりを見た。


「か、彼との子供なんです!」


里帆は近くにいた修太朗の腕を咄嗟にとり、そのまま自分のほうへ引き寄せる。


「え?」


いきなりそうされた修太朗はよろけながら目を大きく見開いた。どういうこと?と言わんばかりの表情で里帆の横顔を見つめる。


「……そんなの信じろって?」
「本当なんです。ね? 修太朗さん」


お願い否定しないで。
祈りにも似た思いで修太朗に訴えかけると、彼は戸惑いながらも「えっ、あ、ええっと、そうなんですよ」と乗った。ぎこちなかったが、否定されるよりはいい。
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