懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
里帆は修太朗の腕を掴んだまま、亮介の目をじっと見た。逸らしたら負けだとわかっていても、今すぐ逃げだしたくなる。
亮介は複雑な表情で軽いため息をついた。
「とにかくもう一度きちんと話がしたい。店を左に出てしばらく行ったところにあるカフェで待ってるから。じゃ」
亮介は、里帆の返事も待たずに店から出ていってしまった。
その場で動けずにいた里帆は、その姿が見えなくなってから脱力したようになる。修太朗から手を離すと、近くの椅子にへなへなと座り込んだ。
「里帆ちゃん、今のどういうこと?」
「ごめんなさい、修太朗さん」
その場の流れで、関係のない修太朗を父親に仕立てあげた。身勝手としか言いようがない。
「ねぇ、里帆ちゃん、今の人、本当はお腹の子の父親なんでしょう?」
店の奥にも騒ぎが聞こえたのだろう。一子が心配そうな顔をして出てきた。
あんな状況を見せておいて、違うと言い逃れはできない。コクンとうなずいた。