懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
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亮介の待つカフェまでゆっくり歩く。すっかり陽は落ち、時折行き交う車のライトに照らされ、修太朗と里帆の影が長く伸びた。
「変なお願いをしてごめんなさい」
「それはいいんだけどさ……。ほんとにいいの?」
「……はい」
ワンテンポ遅れて返事をすると、「今、一瞬ためらったな?」と修太朗に突っ込まれた。
「いえ、そういうんじゃなくて。本当にそれでいいんです」
慌てて首を横に振って否定する。
ずっと秘密のままでいい。ひとりきりで産んで育てていく決心はついている。
修太朗は「なんかいまいち納得いかないなぁ」と首を捻りながら、到着したカフェのドアを開けた。
ハワイをイメージした木目調の店は、冬のこの時期でも遠くからやって来るサーファーで賑わう。
たとえどれだけの人がそこにいようと、里帆はすぐに亮介の姿を見つけてしまう。吸い寄せられるように視線が向かった先に、彼の背中が見えた。