懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
修太朗の顔は真剣そのものだった。きっと彼なりに悩みぬいた末の答えだったのだろう。
無責任に里帆の嘘に乗れない。そう判断したからこその決断に違いなかった。
「お名前も存じませんが、のこのこここへやって来てすみません。里帆ちゃんとしっかり話し合ってやってください」
修太朗は鼓舞するかのように里帆の肩をトントンと二度叩き、店から出ていった。
残された里帆たちの間に再び静寂が訪れる。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
里帆の頭の中にはそればかりがぐるぐると回った。
「里帆、俺とやり直そう」
亮介の言葉に心が大きく揺れる。
ふたりで過ごした時間が幸せだったからこそ、その言葉は里帆にとって大きな誘惑。
あの時のように亮介とまた一緒に。
想像するだけで胸が震えた。
でも。
里帆は懸命に首を横に振った。
それはできない。
「どうして?」