懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「まぁ否定はできませんけど」
少しだけ唇を尖らせつつ、里帆の目もとには笑みが滲んだ。
「明日はそんなに早い出発じゃないから、チェックアウトまでゆっくりするといい」
「ありがとうございます」
フロントでチェックインを済ませ、別々の階で降りる。
副社長の亮介はデラックスルーム。里帆は当然ながらスタンダードルームだ。
シックな内装は落ち着きがあり、シングルとはいえそこそこの広さはある。市内でもグレードの高いホテルのため、スタンダードでも十分快適に過ごせそうな部屋だった。
カーテンを開けると眼下に色とりどりの光が散らばり、十階からの夜景が美しい。
しばらくその景色を眺めていると、遠くの空が淡く光ったような気がした。
……雷?
じっと見ていると、もう一度ぼんやりと雲が光った。
鳴りだしたら嫌だな……。