懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
里帆は、子どもの頃から雷が大の苦手。下校中にいきなり空が重苦しい色に変わったかと思えば雷が鳴りはじめ、みるみるうちにどしゃ降りの雨に見舞われたことがある。
大きな太鼓を叩くような音は体の芯にまで響き、公園の遊具の下で雨宿りをする里帆の近くで落雷が発生したのだ。運よく里帆はなんともなかったが、それ以来トラウマだ。
そういえば今朝の天気予報で、空模様が不安定だと言っていたのを思い出す。地域によっては、季節外れの雷雲が現れるかもしれないとも。
「早くシャワー浴びて寝ちゃおう」
カーテンを閉め、準備をしてバスルームにこもる。熱いシャワーを勢いよく頭から浴び、急いで出ると、重低音が遠くから聞こえた。
「やだ。どうしよう……」
カーテンの隙間から恐る恐る外を覗く。その瞬間、夜空に閃光が走り、数秒後に先ほどよりも大きな音が轟いた。
「きゃっ!」
耳を塞ぎ、その場に小さくなる。大きなホテルだから停電はしないだろうが、この大きな音がたまらない。