懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
心臓は早鐘を打ち、恐怖から体が震える。
ひとりきりでいるのが耐えられなくなった里帆は、コートを羽織り部屋を出た。
向かったのは、ほかでもなく亮介の部屋。上司と部下だとか、すっぴんだとか言っていられない。とにかくひとりでいたくなかった。
十五階にいる彼の部屋のインターフォンを押すと、シャワーを浴びたところだったらしくタオルで髪を拭いながら顔を覗かせた。
「どうしたんだ」
目を丸くして里帆を見る。
「すみません、雷が――」
里帆がそう言った瞬間、大きな音が鳴り響き、里帆は先ほど同様「きゃっ!」と小さく悲鳴を上げてうずくまった。
「もしかして雷が苦手とか?」
「……そうなんです」
くぐもった声で答えた里帆の腕を亮介が掴んで立ち上がらせる。
「とにかく中においで」