たとえば、こんな人生も
「……それはさ、ひなたちゃんにだって言えることだよ」


立ち止まったいつきさん
つられて足を止めた私に
塞がってない方の手を伸ばして
ぽんぽんと優しく頭を撫でた


「そうやって
他人に優しさを見出だすことのできる人は
相手を思いやる心を持ってる優しい人だから」


「相手を見ようと解ろうとしなければ
そもそもそれに気づきすらしない」


「ちゃんと目の前にいる相手を見てるってことだから」



…。



「だから、ひなたちゃん
きみも「誰か」を、俺を頼って」


「ぼろぼろになる前に
辛いとか苦しいとか思ったなら
ちゃんと口にして」


「きみが笑って穏やかでいられるなら
俺はなんだってするから」


「…どうして、いつきさんはそんなに私に良くしてくれるんですか?」


「うーん…自分がそうしてもらったからかな」


「たくさん優しさを貰ったから
誰かに優しさを返したくなったのかもね」
< 100 / 177 >

この作品をシェア

pagetop