たとえば、こんな人生も
「いつきの欲しいもの?」


仕事が終わって
オーナーの所へやって来た私

ちょうどオーナーは休憩中だった


ソファーに座って
出されたお茶をひと口飲んでから、私はオーナーに話を切り出した

同じようにカップに口をつけていたオーナーは不思議そうに声を返した


「お世話になったお礼に何かをあげたいって思ったんです
シン君に聞いたらいつきさん、欲しいものがあるって」

「なるほど」

「オーナーならそれが何か知ってるかもって言われたので」

「…そうだね。一応聞いてはいるよ」

「!教えてくださいっ」

「口止めされているわけではないが
私が答えるのは憚(はばか)られるな」


オーナーは困ったように笑う
心なしか少し面白がるような表情にも見える


「高いものですか?」

「高い安いと
お金で価値を決めるのは難しいものだよ」

「?」


値段をつけられないもの?
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