たとえば、こんな人生も
「随分いつきになついたのね。ひなた」


貰った差し入れを抱えたまま
その場で考え込んでしまってた私に、背後から声がかかる


「れいかさん」


振り返れば、笑顔を浮かべたれいかさんがそこに立っていた


「いつきの前だとひなたはあんな風に笑うのね」

「あんな風って?」

「…」


訊ねてもれいかさんはくすりと笑うだけ

不思議がる私にれいかさんはそっと手を伸ばして、なぞるように私の顔に触れる


「いつきのところへ行ってから
ひなたは綺麗になったわ」

「まるで、うちの猫達みたい」

「…猫」


前にお店に迷いこんだ親子猫

痩せっぽっちでがりがりで
見るからにかわいそうだったその猫達

尽きようとしていたその小さな命を救ったのはれいかさん

あの猫達は、れいかさんに引き取られてから見違えるくらい綺麗になって

穏やかな、あたたかい場所で

幸せに、暮らしてる


……。


「預かりじゃなくて
そのままひなたも飼ってもらえば良かったのに」

「…ペット扱い」

「ふふ。言い方失礼だったわね
ごめんなさい」
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