たとえば、こんな人生も
「でもね、ひなた」


「あなたは、ちゃんとあなたを愛してくれる人の所へ行った方がいいわ」


「優しさやあたたかさを
慈しみを持ってあなたに接してくれる相手の所へ」


「あなたは幸せになれる場所にいかなきゃ
あの家ではあなたは幸せになれない
あなたの父親はあなたを不幸にするだけ」


「…」


「切り捨てろ、忘れろなんて言わないけど
「一旦離れる」ってことも考えてみたら?」


「一緒に居続けることで
お互いを不幸にしてしまうこともあるから」



そう話すれいかさんの表情は
笑っているけど、どこか切なそうで

それを知っている、見ている人の言葉だとすぐ解った


「…」


『はい』とも『いいえ』とも言えなくて

返す言葉が何も浮かばなくて

私はただ、ぼんやりれいかさん言った言葉を心の中で繰り返した
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