たとえば、こんな人生も
「…」


リビングの扉の前

少し緊張してる自分がいた


深呼吸して扉を開ける

ビールを片手にソファーに座り込んでたあの人と目が合う

テーブルや床にはたくさんの空き缶や空き瓶が無造作に転がってる

全部お酒

今日は朝からかなり飲んでるみたい



「…あのね、話があるの」

「…」


私の声は聞こえてるはずなのに
あの人は気にも留めず
手にしたビールを仰ぐように飲み干して、また新しい缶ビールの蓋を開けた


「…そういうのもう止めて」

「…」

「お酒に逃げるの止めて」


…。


「………逃げる?」


少しの間

遅れて反応が返ってきた

その言葉に苛立ったように持ってた缶ビールを床に勢いよく投げつけた

中身があたりに飛び散る



「……お前に何が分かるって言うんだ?」


お酒の飲みすぎで血走った目

鋭い視線を向けられたけど、私は黙ってそれを受け止めた


「…」

「俺の何が分かる
何も知らない子供のくせに」
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