たとえば、こんな人生も

｢こんな生活、もうやめよう｣

｢…｣


そうやって周りに八つ当たりして

だだをこねたって


｢変わらなきゃ。…前に、進まないと｣

｢……うるさい｣


ああすれば、こうすれば良かったって
自分の選択に後悔したって

辛いと悲しいと嘆いたって



｢………お母さんは、もういないんだよ｣



どれだけ願ったって


死んだ人は帰ってこない



｢っ…黙れっ！！｣



テーブルを蹴り飛ばして、立ち上がったあの人は勢いよく私の胸ぐらを掴んで

そのまま壁に突き飛ばした


｢……っ｣


背中と後頭部に強い衝撃


ずるずると床に崩れ落ちる私を見下ろして
怒りで半狂乱になったあの人は叩きつけるように同じ言葉を口にする


｢…黙れ黙れ黙れっ！！！｣


｢…｣


｢うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい！！！｣


｢どいつもこいつもうるさいんだよっ！！｣


手当たり次第にものを床に、壁に投げ付け、壊していく姿をぼぅっと見つめる


｢……俺のせいじゃない、違う…
……俺のせいじゃない…｣


ぐしゃりと髪の毛をつかんで
ぶつぶつ呟きながら
片方の手でテーブルを何度も何度も叩きつける

その様を眺めながら、私は深く落胆した



……ああ、やっぱりだめかぁ…


結局伝わらない

私が何を言っても、この人には伝わない


……少し、期待したんだけどな


ここ最近は暴力も収まってたし
お酒も飲んではいたけど、潰れるほど飲んでたわけじゃなかったから