たとえば、こんな人生も
その後の事は記憶になくて


頭を打ち付けてふらふらだったのもあるし

色んなことが衝撃的だったのと

なにより

いつきさんが無事だったことにほっとして


私はそのまま意識を手放したから




「…」


目が覚めて私は
自分が懐かしい場所にいることにすぐ気付いた


……いつきさんの家


もっと言えば、お世話になってた時に私が使わせてもらっていた部屋だ


「…起きた?」

「……いつきさん…」


声のした方に顔を向ければ、すぐ傍にいつきさんがいた

不安そうな表情を浮かべてる


「診てもらって大事ないとは言われたけど
…具合どう?」

「…大丈夫です」


どうやら眠ってる間にお医者さんを呼んでくれたみたい

もしかしたら一度病院に連れていってくれたのかも


起き上がろうとする私を支えようとするいつきさん

もう一度、「大丈夫です」と断りを入れた



「…」



……ありがとうございます、とか…
ごめんなさい、とか…

……色々、言いたいことや聞きたいことはあるけど


一番は


「……いつきさん、なんで家(うち)に…?」


あの時、家にいつきさんが現れた理由
< 152 / 177 >

この作品をシェア

pagetop