たとえば、こんな人生も
「……全身縛った方がいいかな
ユラン姉さんに教わった亀甲縛りやってみよ」




「……それは勘弁して欲しいかな」




ぴんっと紐を引っ張れば
ぽつりとこぼした言葉に返事が返ってきて

視線を向ければ、眠っていたその人は

苦笑いを浮かべて私を見ていた


「あ、起きた
おはようございます」

「おはよう
…それでお嬢さん、これは一体どんな状況?」

「縛ってます」

「いや、それは分かるよ
なんで俺、縛られてるの?」

「不審者だからです」


答えながら私はまた受話器を手に取る


「あー、待って待って
俺、今日からここで世話になる者です」


通報されるとでも思ったのか
少し慌てた様子で起き上がって、その人は言った



「……ここで?」


「そう」




「いつきです。以後、お見知りおきを」




人当たりのいい笑顔を浮かべて私を見るその人に


私はきょとんと目を瞬かせた
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